この度、森本良信先生の新作展を開催させて頂くことになりました。
今回の新作特集のテーマは「Texture of Bizen」です。
これまで森本良信先生は様々な表現方法がある備前焼の中でも、
重厚な焼成や古陶磁をリスペクトした造形に重点を置いて制作をされていました。
そんな中で近年の興味はもっぱら備前の生み出す質感に向かっているそうです。
そこで今回はその質感にフォーカスした新作特集となります。
重厚な焼きのベールから垣間見える魅惑の肌が素晴らしい作品ばかりです。
ネット販売という質感を伝えにくい媒体での新作お披露目となりますが、
次元の壁を越えて新しい森本備前の魅力を余すところなくお伝えできるよう、
現在商品ページを鋭意製作中ですので是非ご期待下さい。
撮影が完了した作品はこのページの最下部の作品一覧からご覧頂けるようになります。
それでは最後に備前と緋襷の二つについて見所を記載させて頂きます。
どうぞ宜しくお願い致します。
備前茶碗
「Texture of Bizen」
備前の陶土は他の産地の土と比較し、非常に強固に焼き締まるという特性を持っています。
また、強固に焼き締まりながらも鉄反応による様々な発色があるのも特徴の一つです。
その為、近年の備前でよく言われている甘焼きの「土味」を狙うよりも、
長い期間大量の熱を与えて焼き上げる事で、胡麻や桟切といった降り物を素地へ強く刻み込み、
古陶磁のように強固に焼き締まった後に生まれ出る「質感」を重視しています。
この工程を経て「土」がより強固な「焼物」へと組成を変えて行く中で、
甘焼きではなく十二分に焼き抜かれた上で発現する「抜け」を楽しむことが可能となります。
もう一つのファクターとして無釉焼締の造形美に対する意識がありますが、
備前陶と近い特性を持つ陶器である南蛮焼締と比較した場合、
南蛮の無駄な装飾を排した島物特有の造形美に対する、
備前の人為と自然の狭間で生まれる造形の妙味を特に意識して制作されています。
緋襷茶碗
「還元焼成による緋襷 Texture of Hidasuki」
緋襷は胡麻や桟切といった窯の中の振り物で景色を作る「被り物」ではなく、
匣鉢の中でじっくりと焼かれ土の成分が表出した「抜き物」の景色です。
そして緋襷は備前陶の焼成の中で、備前の土でなければ成立し得ない景色です。
一般的な白地に赤の線が入った緋襷は、完全酸化焼成で焼き上げることが出来ます。
しかし敢えて還元焼成の緋襷に取り組み、素地に炭素をしっかりと浸炭させる事で、
須恵器のような暗青色の肌に、濃い紅色の緋襷を発現させています。
緋襷の赤い部分は稲藁による薄い釉薬状の被膜となっており、
これが剥き出しの肌に対するコーティングのような役割を果たすことで、
使用時に非常に心地よい口当たりと肌触りを実現させています。
初見ではインパクトのある濃い色合いがやや目につきますが、
お使い頂くうちにしっとりと馴染み育つことで肌が本当の魅力を発揮します。
是非お手元にて末永くご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
作品一覧
作品の販売について
4月10日(水)20時より販売開始いたします。