皆様明けましておめでとうございます。
旧年中は格別のご愛顧を賜り、誠に有難うございました。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
川口陶楽苑は本日5日より本年度の営業を開始致しました。
年末には金重多門先生の窯出しに伺って参りましたが、
何とかギリギリ30日に作品を拝見することが出来ましたので、
1月中旬頃までには「金重多門 新作酒器特集」として、
当店HP上にて何点かお見せすることができそうです。
公開まで是非お楽しみにお待ち下さいませ。
さて、本日は更に去年入荷しておりました、
金重素山先生の極上の徳利二本をご紹介したいと思います。
両者ともに見事な窯変が出ており甲乙付け難く、
店頭で御覧頂いておりましたお客様の間でもかなり好みが別れました。
皆様はどちらがお好みでございますでしょうか。
向かって左側は窯変と土味を両方楽しめるものに、向かって右側は灰被り窯変に特化した仕上がりとなっております。
左側 窯変徳利
こちらの作品は僅かに山土が入ってるのか非常に濃厚な土味が見どころとなっています。
窯変も勿論素晴らしいのですが、正面脇のネットリとした紫蘇色が大変見事です。
右側 窯変徳利
こちらの作品は窯変・焼きに特化した徳利となっています。
灰被り窯変全体が濡れるとまるで墨のような極上の黒色へと変化します。
素山先生の極上の窯変徳利二本は如何でしたでしょうか。
一口に窯変と言っても全く違う表情となっており、
素山先生の窯焚きの上手さがひしひしと感じられますね。
共通しているのが徹底して見えない部分まで配慮しているという点です。
通常置いてある状態ではあまり見ない底部までしっかりと考えて焼いており、
正面と見比べても何ら遜色の無い面白い景色で焼き上がっています。
容量を調べるために水を入れても見かけよりもたっぷりと入り、
それでいて持った時に軽すぎない轆轤挽きは見事という他ありません。
「割れた時に下手くそだと恥ずかしかろうが」と言われていたそうですが、
見えないところまで徹底して美しさを追求する素山イズムに感服しました。
多門先生に祖父である素山先生のお話をお聞きした所、
通常ありえない焼き上がり方をした作品が何点か自宅にあり、
素山先生は窯の中の作品を平均して上手く焼くのではなく、
その窯をダメにしてでも最高の逸品を狙うような焚き方をされていたそうです。
実際に窯焚きの途中に窯内を少し見て「こりゃダメじゃな」と言って、
さっさと火を止めて窯焚きを辞められてしまったことがあるそうです。
更に凄いのがもうその日のうちに轆轤に向かって作品作りを始められたそうで、
これもまた素山先生の作陶理念が垣間見えるエピソードですね。