皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
本年も格別のお引き立てを頂き誠に有難うございました。
また来年も素晴らしい作品をご紹介出来るよう努力致しますので、
川口陶楽苑を何卒宜しくお願い致します。
さて、今日は今年最後のブログ更新となります。
最後を締め括るに相応しい古備前の逸品をご紹介させて頂きます。
古備前ファンの間では有名な俗に言う「海揚がり」作品ですが、
その中でも珍しい八寸の平鉢となっております。
器の中心は火照ったような緋色が出ており、非常に見応えがあります。
外周部にいくにつれ、還元焼成の色合いが濃くなり、
青味がかったグレーの土味が強く出るようになっています。
これは焼成時に焼き締まった際の炎の特徴を残しているそうで、
窯の焚き始めから徐々に外周部が先に焼き締まり、
その際、密閉に近い状態の為に還元焼成の色合いが残っています。
その後に大きく空気を取り込んで焼く段階で中央部分が焼き締まり、
その際の炎の状態である酸化焼成の色合いの影響を強く受けているそうです。
土がレコーダーのように炎の状態を記憶しているのは大変興味深いですね。
こちらの面を上にして別作品に伏せて焼かれた為、たっぷりと胡麻を受けています。
この胡麻の色はまさに古備前にしか無い唯一無二のもので、
ほんのりと白味の強い胡麻は遠くからでも一目で古備前と分かります。
グレーになった部分は所謂胡麻剥げと呼ばれるもので、
器肌に張り付かず浮いた状態になった胡麻を出荷前に削り落としているそうです。
古備前には焼成後に耳や胴等をどんどん手を加えてカスタムされたものがあり、
現代の作品に対する意識とはまるで違っているのが非常に面白いですね。
茶褐色のネットリとした土味も味わい深く、表面とは違う景色で両面楽しめます。
制作方法は筒輪積みで土を立ち上げた後、玉縁を作ってから横に引き伸ばしてあります。
以前見た同型の古備前八寸鉢も全く同じ作りとなっていました。
高台のない底部の造りも同じで、恐らく皿の中の定形の一部だったと推測されます。
写真斜め上と反対側に窯切れも入っておりますが、古備前では非常に良くあることで、
窯切れ自体は当時あまり気にしていなかったのだろうと思います。
作品の造形、窯詰めや焼成方法、そして使用するにあたっての心構えなど、
全てにおいて現代とは全く違う常識が古備前の時代には存在しており興味深いです。
箱に鑑定があり、平成9年に古備前鑑定に出しております。
本作は海揚がり故に海中でずっと作品が保管されていたようなものであり、
その為作品全体に汚れが殆ど感じられず使用感は現代陶工の作品に近くなっています。
肌の状態が良く、古備前であっても実際にお料理を盛って使って頂けるようになっています。
勿論、眺めて飾るだけも表と裏で別の景色が楽しめる非常に贅沢な作品です。
(古備前桃山時代/海揚がり八寸鉢 鑑定箱)
size:径24.0cm×径23.7cm×高さ4.2cm price: 売約済
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