皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
今日は金重晃介先生の新作第二弾として窯変美しい酒呑をご紹介させて頂きます。
近現代の備前陶芸史の中でも大きな転換点となった金重陶陽先生の足跡の中で、
今現在、ある意味では最も大きな影響として考えられるのが備前酒呑の一般化ではないでしょうか。
備前焼作家として酒呑を作っていないという方にはお会いしたことがありません。
勿論商いをする立場で見ても酒呑というのは外せないカテゴリーであると考えております。
作品種別で見ると最小クラスの酒呑ですが、何故こんなにも多くの方々に愛されているのでしょう。
かくいう僕自身もまた日本酒の美味しさと芳しさに最近虜となりつつあり、
備前酒呑で晩酌を楽しみながらほっと一息つきつつ土味を愛でるのが日課となってきております。
そして最近はどうも酒呑は名脇役であるように感じることが多くなってきました。
以前は酒席であればやはり備前酒呑が主役であろうと考えていたのですが、
どうもそれは違ったようであくまでもお酒が主役となり、酒呑はエスコート役であると感じます。
唇へあくまでも異物であるお酒をスマートに運びこむという役割の中で、
お酒の味わいや香りを引き立てて自らは観客である唇に違和感を覚えさせない。
これだけでもかなり大変な役割ではありますがそれだけには留まらず、
お酒を運び終わった後にはスポットライトが当てられて主役となります。
今度はお酒の余韻の中で、酒呑という演者単体の魅力で観客を楽しませねばならない。
まさにアカデミー賞助演男優賞ばりの名演技が求められているように思います。
往々にして名映画では助演のキャラクターが大変な人気を得てしまうことがありますが、
素晴らしい酒呑というのもまたそれと同じようなものなのかも知れませんね。
そう考えると求められるものが大きい分、作家にとっては挑戦しがいのある作品となるのだと思います。
酒呑は本当に自由にのびのびと制作を楽しんでおられる方が多いです。
個性豊かで作家さんの気持ちや想いに酒席で直に触れられる作品であり、
小さくとも存在感があってついつい目を奪われてしまう素敵なものなのでしょうね。
真正面には見事な隈取りと緋色が出ています。
酒を摺りこんでやるとほのかな緋色が見事な色合いになります。
口縁部の波打具合がやや激しく、自分に合う呑口探しが楽しそうです。
灰被りは紫銀の炭化が楽しめます。
見込みは柔らかなグレーから灰被りの濃いグレーへのグラデーションが楽しめます。
スッキリとした高台削りは作為を感じさせず脇役に徹しています。
金重晃介先生の新作備前酒呑、如何でしたでしょうか。
この作品を眺めていると言葉が溢れだし、ついつい作品紹介からずれてしまいました。
スッキリとした造りで唇とお酒を違和感なく結びつけつつ、
使用後にはその素晴らしい土味にて見事なる独演で魅了してくれます。
金重一門のこの柔らかな緋色は独特で、赤でもなく淡黄色でもない金重一門だけの色合いです。
何年何十年と手間暇をかけて土作りを行うことによって目にすることが出来るこの土味ですが、
まるで名脇役が何十年とキャリアを重ねて貫禄と悲哀と絶妙な存在感を纏うかの如くですね。
(金重晃介/備前酒呑 size:径7.0cm×径6.9cm×高さ6.0cm price:売約済)
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