皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
ジリジリと焼けるような日差しの日が続いております。
水分補給にはくれぐれもお気をつけ下さい。
さて、本日は先ごろお客様にご売約頂きました作品ではございますが、
非常にユニークな島村 光先生の枡鼠の細工物をご紹介したいと思います。
枡鼠といえば昭和期の名工なども手掛けた備前の定番のモチーフの一つです。
基本的な構図としては大きな一升枡の中に数匹の鼠が入っており、
どこか惚けたような表情で食べ物を探している様子は何とも愛くるしいものです。
今回の島村先生の枡鼠はまさに温故知新のオリジナリティ溢れる細工となっています。
島村先生ご自身が古の細工師達に惜しみないリスペクトを送りつつ、
名工達の模倣ではなく、備前細工の最前線ともいうべき独自の境地を開拓されています。
本作でも枡という概念をより新しく捉えてフレームのように変形させており、
そこに巧みなフリーハンドによる幾何学文様を施しています。
可愛らしい枡は鼠の骨格の可動範囲や毛皮の伸び方までも計算に入れ、
一見すると簡素ですが極めて見事な体型の表現を見せてくれます。
小西陶古先生や金重陶陽先生らも手掛けた伝統の枡鼠という造形を、
現代の生活空間に合うように抜群のセンスを持って再構築されています。
細工物としてしっかり使われること、つまり鑑賞される事を意識して、
現代人の生活の中に溶け込めるようになっており素晴らしい仕事ぶりとなっております。
絶妙なる箆仕事とともに島村先生の備前の細工師としての矜持を見ることが出来ます。
とても可愛らしい表情は見ているだけで癒やされます。
耳の向きや顔つきなど細かな個体差まで表現されています。
とくに驚いたのがこの腰つきです。
鼠のこんもりとした丸い腰つきが見事粘土で表現されています。
本来害獣であるはずの鼠を可愛らしく表現するという古の陶工達の洒脱な精神にも驚かされますが、
さらにそれをフォトフレームのように進化させた島村先生の手腕に脱帽です。