皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
今回は解説第三弾として桃山期を目指して制作されたものの中から、
岡山後楽園所持の名碗「只今」の写しについて一部解説させて頂きたいと思います。
今回の茶碗は今までの森本良信先生の桃山研究の集大成と言っても過言ではない、
桃山期の優雅さと力強さを見事に宿した作品となっています。
中でも大変特徴的なものが、ゴリゴリと土を抉り取るようにして出来た高台脇です。
一見箆で乱雑に土を抉ったように見えて、実はここに桃山期の高次元の美意識があるそうです。
実はこの大胆な削りは「力強く見せてやろう、変わったことをしてやろう」とする箆ではなく、
あくまでも人の掌の形に合わせて、持つ時にフィットするように計算された箆だそうです。
桃山期の黒楽茶碗の名品や志野茶碗の名品にも同じ計算がされているそうです。
歪むのではなく人間の体に合わせて正しく変形していると言えます。
持ってみてお茶を頂く動作をしてみると、とても掌にしっくりきました。
こちらの口縁部からの写真でも分かる通り非常に緩やかな三角形になっています。
出っ張った部分が飲み口としてとても使いやすくなっており、
力強くも品のある造形の裏側には、使用感に対するとても深い考察が隠されています。
その他にも様々な造形理論が組み合わさって桃山期の名品たちは成り立っているそうで、
表面的な美意識を超越して、とても高い次元での造形理論が存在していたようです。
桃山期シリーズの作品
・備前茶碗
・備前茶入
・備前水指