先日、常連のお客様と焼き物談義をしておりましたところ、亡くなった正宗 悟先生の話になり、
お客様が生前に正宗先生に酒呑の制作をお願いして見事な焼きの作品をお譲り頂いたというお話を伺い、
是非一度拝見させて頂きたいとお願いし、後日お持ち頂きました。
期待に胸を膨らませながら、箱から出された作品は想像以上の素晴らしい作品でした。
悟時代の作品だそうですが、十文字に削り込まれた力強い高台に窯変の素晴らしい景色、
見込みにまで美しい窯変が配され、どこを見ても表情豊かな贅沢な一品です。
もう一点、晩年に当店にてお買い求め頂いた酒呑もお持ち下さいました。
杜康時代の作品で、楽茶碗のような優しいフォルムと部分的に黒く発色した焼成が面白い酒呑です。
お亡くなりになられる少し前、「良い土が手に入った!」と嬉しそうに語っておられた正宗先生が思い起こされます。
その土は焼くと黒くなるという土で、写真の作品もその土が使われています。
以前、松井與之先生に、松井先生が陶芸センターの講師であった頃に生徒であった正宗先生は、
当時から抜きん出た才能を発揮されていたというお話を伺った事があります。
備前を代表する実力者でありましたが、若くしてこの世を去られた事が本当に残念でなりません。
今、正宗先生が生きておられたら、どんな作品を見せてくれたのだろう…と考えてしまいますが、
久々に先生の素晴らしい作品と出合えたことが嬉しかったです。