皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
今日は昨日に引き続き、さり気ない土味の中に土の生命力の発現が見られる徳利です。
一見するとまるで金重一門のような素晴らしい紫蘇色が出ています。
陶陽先生に窯焚きを褒められた、自作の酒呑を差し出せば叱られた、
などなど六郎先生もまた金重一門に縁の深い方です。
郷里に名を轟かす名工である金重陶陽先生に憧れ、
その背中に追い付きたいと弛まぬ努力を積み重ねてこられたのでしょうか。
有名な守破離という言葉がありますが、
今作はまさに晩年独自の境地に至る前の「守」の段階の秀作ではないでしょうか。
抜けはオレンジ、その周りは濃厚な紫蘇色。
僅かに光を孕んだその肌は、数寄者の心をときめかせる最高の柔肌です。
ころんとした可愛い蕪型です。
晩年はこのテイストはあまり見られなくなったので貴重です。
吸い付きたくなる、もしくは吸い付いてくる。
そんな言葉が思い浮かぶ素晴らしい口造り。
口縁部には使いやすさと同時に色気を求められますが、見事にその欲求を叶えてくれますね。
腰から下はよく焼けて焦げ胡麻が出ています。
如何でしたでしょうか。
今作は箱の状態などから見て晩年よりもやや前の作品です。
これよりも前は鉄分が多く黒っぽい焼き上がりの土味が多いです。
この頃をターニングポイントとして破と離へと繋がっていきます。
次回は六郎先生の特別展のラストを飾るに相応しい「破」の徳利をご紹介致します。