皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
今日は生誕100年特別企画 中村六郎H氏コレクション展のラストを飾る、
素晴らしい窯変の出た扁壷徳利をご紹介したいと思います。
前回のテーマでは「守破離」の中の「破」をテーマとして、
名人が晩年独自の境地を花開かせる前の、芽吹きが感じられる作品となっております。
金重陶陽先生を始めとする金重一門伝統の扁壷徳利の造形に近いです。
しかしぽってりとした膨れ方や菱形に近いバランスなど独自のアレンジが加えられ見事です。
肩口には線文がしっかりと刻まれています。
晩年の扁壷造形になるとこの線文はオミットされるのでとても新鮮です。
こちらが真横から見た写真です。
金重一門の横に広い楕円形の造形とは違う、中村六郎先生オリジナルのバランスが採用されています。
濃厚な灰被り窯変に冴え返る緋色が見事です。
これにて生誕100年特別企画は終了となりますが如何でしたでしょうか。
この作品よりももう少し前の扁壷徳利は横に広く楕円形の造形でした。
こちらはやや広がって菱形になっており、
中村六郎先生独自のあの扁壷型へと変化が始まっているように感じます。
中村六郎先生は生涯を通じてかなり作風を変えられており、
こうして見比べることで、改めて様々な違いを発見することが出来ました。
高位に鎮座するを由とせず、絶えず努力を続けられた方なのではないでしょうか。
それ故に亡くなられた今でも作品に宿った熱は冷めず、
未だに様々な人を魅了し続けているのだと感じました。
名人の弛まぬ努力にただただ畏敬の念を抱くと共に、
お酒への深い愛に驚かされるばかりです。