皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
例年よりは涼しく感じられますが、もうそろそろ夏本番といったところでしょうか。
夏恒例の洗濯物にクワガタムシがぶら下がっていることが多くなってきました。
さて、本日は企画展細工の美の最後の作品をご覧頂きたいと思います。
細工物の名工として知られ、備前焼作家にもファンが多い西村春湖先生の獅子香炉です。
菱型の造形に特徴的な耳付けを施しており、見応えがある香炉に仕上がっています。
蓋の部分の透かしなども抜群の丁寧さがあり、流石と言わざるを得ません。
菱の角や透かしや耳など、備前土らしい柔軟さを活かしたシャープな作りとなっており、
これだけの仕事ぶりであっても焼成時の窯疵などなく驚かされます。
蓋にはカラッとした黄胡麻が乗り、暗めの土味に華を添えています。
裏面は桟切り窯変になっています。獅子の精悍な体つきが見事です。
さて、お気づきの方も居られるでしょうが、実はこれは極小サイズの香炉です。
電池と比較するとご覧の通り、香炉というよりも香合に近いサイズとなっております。
本当に言葉通りに掌にそっくりそのまま乗ってしまいます。
単三電池と比較してみました。
顔は胡麻が掛かってしまいちょっと惚けたような可愛い顔つきになっています。
ディズニーアニメの虎が笑っているように見えて本当にユーモラスです。
「別名箆仕事というくらいに、細工は箆が命」と島村先生が仰っていましたが、
内側や蓋裏の箆削りによる仕上げを見てその言葉の意味がよく分かりました。
裏には虎の肉球のような可愛い脚が付いています。
今回の手乗り獅子香炉、そして企画展細工の美は如何でしたでしょうか。
人間の限界に挑戦するような細工物は見ていて圧倒的な濃さがありますが、
そのどれもにユーモラスや美意識やちょっとした工夫が盛り込まれ、
人間臭さが良い意味で働いて、素晴らしいスパイスになっているように思います。
桃山時代後期から江戸時代初期にかけて伊部の陶工たちによって生み出された細工物は、
架空の存在である獅子や布袋を実にユーモラスに描写し大変な人気が出たと伝え聞きます。
極限まで磨き上げた技と、人間だけが持つユーモアが一体となって不思議な魅力を持っていますね。
(西村春湖/獅子香炉 ※当時の販売店書付の箱)
size:耳含む径10.8cm×径6.4cm×蓋含む高さ7.3cm price: 売約済
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