皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
私も師走らしい慌ただしい日々を過ごしておりまして、
前回のブログ更新から大きく間隔が空いてしまいました。
さて、本日は窯出しされたばかりの曽我 尭先生の新作をご紹介したいと思います。
いつもならば「曽我 尭先生の窯出しがありました」というタイトルをつけるのですが、
今回は少しばかり思うところがあって「矛盾ノ器」というタイトルにさせて頂きました。
矛盾という言葉は皆さんもご存知の通り、辻褄の合わない事柄に対する故事成語ですが、
世の中においてはあまり良い意味では使われておりません。
しかし、今回の曽我先生の作品を見て最初に思い浮かんだのが「矛盾」でした。
勿論とても良い意味でブログタイトルに取り入れさせてもらっています。
そもそも矛盾とは「どんな盾も貫く矛」と「どんな矛も防ぐ盾」を売るという商人からきています。
全能のパラドクスにも似た、逆説による辻褄合わせが破綻している状態ですね。
私は今回の曽我作品はこの矛盾を成立させてしまっているような魅力があると感じています。
今回の作品を説明しようとすれば、矛盾のような言葉を使うしか説明のしようがないのです。
「光沢はあるけど、光沢がない」
「奥ゆかしいけど、とても土味が主張する」
「荒々しい肌であるがきめ細かい肌である」
「最新作であるが古格を帯びて今にも朽ち果てそうだ」などなど。
とくにこの独特の光沢感と質感については古備前を見ている人は驚かれると思います。
古備前だけにある、土の荒々しさと擦り切れたような味わいが見事に再現されています。
また、光沢感もマットであっても決して光沢がない訳ではなく、寧ろ光を上手く取り込む肌質となっています。
このように説明すればするほど矛盾が生じるのでこのようなタイトルとさせて頂きました。
古備前も矛盾を多く孕んでおり、それ故にファンのみならず備前焼作家を魅了し続けています。
今回の矛盾ノ器達も是非実際に手にとって頂ければと思います。
写真左
写真左の酒呑です。やや窯変掛かった上がりですが、やはり特筆すべきは抜けの土味でしょう。
この土味部分の矛盾は「よく焼き締まっていながらも、緋色の柔らかな土味が出ている」という点です。
これまた古備前に見られる「強い緋」を見事に出すことに成功しています。
質感も抜群であり、初見の粗さからは想像もつかない上質の肌触りになっています。
写真中
写真中の酒呑です。この酒呑の光沢感は抜群でまさに「光っているけど光っていない」というものです。
抜けのようになったオレンジ色の部分は途中から突然光沢が発生し、
マットな肌合いの部分と合わせて光沢が半々で切り替わるようになっています。
写真で見るとささくれてガサガサとしそうな土味の肌合いも、
まるで数百年人々の掌で愛でられてきたように柔らかく擦り切れています。
写真右
写真右の酒呑です。「奥ゆかしく地味ですが、とても主張があり派手」です。
一見すると土肌と緋襷とが同系統の色合いで緋襷自体が沈んでいるように見えて、
見れば見る程に色が浮かび上がってくような不思議な味わいを持っています。
緋襷という素肌の焼き上がりの分、繊細な土味が堪能できるようになっており、
石爆ぜ、土の擦り切れ、土味の柔らかな質感など、知れば知るほどに主張してきます。
(曽我 尭/備前酒呑 共箱製作中)
写真左 size:径7.0cm×径6.8cm×高さ5.7cm price: 売約済
写真中 size:径7.0cm×径6.8cm×高さ6.0cm price: 売約済
写真右 size:径7.1cm×径7.0cm×高さ5.7cm price: 売約済
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