この度、森本良信先生の新作展を開催する運びとなりました。
今回は森本良信先生の作陶のテーマである「古備前を学ぶ」に忠実に、
各時代各様式の古備前を再現し、そこから見えてくるものを探ろうと思います。
「古備前」というキーワードは備前焼にとって極めて重要な意味合いを持つものであり、
備前焼作家の展覧会では耳に触れる機会の多い、とても普遍的なテーマの一つです。
しかしその言葉の後に「学ぶ」という言葉を付け足すとすれば、
それは展覧会のお題としては少し珍しいキーワードではないでしょうか。
「学ぶ」という言葉は「写す」と置き換えることも出来ます。
幼子がひらがなや漢字を一生懸命に紙に書き写すように、
あるいは景色やモデルをキャンバスにひたすら書き写すように。
ただ最近の世間一般では広義の「写す」という言葉の中に、
あまり陶芸にはありがたくない言葉が混じっているように感じます。
「写す」→「似せる」→「偽物」などがその例です。
そういった言葉もあり、個性を活かすことを至上主義とする現在であるからこそ、
あまり「学び写し習う」という言葉が縁遠くなってしまっているように思います。
我々の知る森本良信先生は、常に古備前を「学び写し習う」事に心血を注がれていました。
備前焼の歴史を追い、古備前に辿り着き、以来十数年研究が止むことはありませんでした。
近年では更に李朝、奥高麗、その他の古陶磁にも目を向け学び続けられています。
「近年、写すという言葉に陶芸にはあまり喜ばしくないものが混じっていますが、
僕は本来、写すという行為はとてもクリエイティブなものであると感じています」
「土、窯、技法と技術、制作風景、各地方の風土、制作理由や時代背景。
何故このような作品が世に生まれたかを探る時、圧倒的な想像力を持って創造します」
「歴史の激流に飛び込み、翻弄され、魅了されたあっという間の十数年でした。
平安鎌倉室町、そして安土桃山に江戸、思考が各時代の世界を想像し、
市井の巷間を這い、時に茶室を覗き込み、国の宝とされる名物たちが、
窯出しの熱を帯びていた頃を常に思い描くようにしていました」
各時代の世界を創造して写し出された今回の森本良信新作展の作品は、
その全てが歴史と、そこから導き出されたテーマを
バックボーンに据えた逸品ばかりでございます。
期間中にはブログでも森本良信先生による各時代の解説を企画しております。
是非本展と併せてご高覧頂けますようお願い申し上げます。
川口陶楽苑
(現在店頭でも作品を販売しておりますので、店頭にて作品が売り切れとなる場合がございます、予めご了承下さいませ。)