本日の更新は伝統ある備前窯元六姓の木村家の十六代、
備前の三奇人と謳われた名人、木村宗得先生の備前虎置物です。
三奇人と呼ばれた所以は宗得先生は当時の備前陶工の中では非常に珍しい、
作陶の時間よりも動物などのモチーフの観察やスケッチの時間が多い方だったそうです。
当時人々の間でそのような慣習はなく、ひたすらに動物を眺め続ける姿を奇妙に思いつつも
見事な細工と陶彫技術を賞賛し三奇人の一人として数えられるようになったそうです。
本作もまた見事な陶彫により、唸りを上げる虎が見事に再現されています。
肩甲骨を盛り上がらせて天を睨み、岩上から今にも飛びかかりそうな迫力があります。
極太の猛爪も精密な削り出しですが爪本来の猛々しい雰囲気を失っておらず、
陶器であっても触れればたちまちのうちに肉を裂かれてしまいそうです。
天を睨む形相も相まって有名な龍虎図を想起してしまうのは私だけではないでしょう。
見事な構図と確かな技術力が合致した時、作品は表現の範囲を拡大させ、
見る者を「その先の構図」そして「新たなストーリー」へと誘ってくれます。
虎の置物でありながら天を舞う龍との避けられぬ戦いを感じずには居られません。
ここまでの技術的な見事さに加えてさらに細かい部分に目をやれば、
三奇人の所以たる異常なまでの観察力の片鱗を見ることが出来ます。
常人であれば虎のイラストを描くとどうしても猫のようになってしまいますが、
本作では筋肉の隆起と萎縮、皮膚の移動、各部位の向きを正確無比に捉えています。
特に耳の向き、牙を剥く動作による唇の移動、舌の立体感と長さは見事の一言に尽きます。
生きた虎の行住坐臥を延々観察し続けた三奇人らしい見事な表現です。
(十六代木村宗得/備前虎置物 共箱)
size:最大幅33.4cm×奥行き17.5cm×高さ20.0cm price: 売約済
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