陶房の月 森本良信と語らう 第二弾

今日は前回の森本良信さんのインタビューの続きです。
今回は前回から引き続いて、日本の良さについてのお話と自身の陶のお話です。

良「日本の良さですか。利休が登場して使えるけど、思想がある作品となるんですよ。長次郎とか織部とか志野のように、歪みを持った造形が出てくる。リズムと空間が作品の中に内包されるんですよ。」

僕「リズムですか。なるほど。」

良「そういった意味で、『深化』させていくって事が日本の良さだと思うんですよ。」

僕「一つのものを深く掘り下げていくんですねー。」

良「そうですねー。細かいって感じもするんですけど(笑)」

僕「欧米とはそこがまた全然違いますね。じゃあ別の質問に移りたいと思います。まずは土についてどういう拘りがありますか?こういう土が良いとか…。」

良「うーん、実は土に関しては良い土も、悪い土も無いと思うんです。僕は使ってるのは只の土(笑)」

僕「そうなんですか。何か意外と言うかビックリしました(笑)」

良「そうかな(笑)基本的な拘りは『只の土を作品に変えたい』っていうのがあって、その変化のふり幅を楽しみたいですね。良い土を使ったといっても、良い作品になるとは思ってないんですよ。」

僕「土に対して偏見がないんですね。」

良「土も人間と同じで十人十色。それぞれの癖を掴んで、それを造りと焼きで生かしてやるっていうのが良いかなって思う。」

僕「土も焼きも造りがそれぞれ生かし合うんですね。」

良「そうですねー。造りはホント無限大です(笑)安倍先生理論の三点展開をマスターしたら。作品にリズムが生れるんですよ。三角を展開していって作曲をする感じかな。それが無限の組み合わせになってくるんですよ。」

僕「はぁ?、難しいですね。その三点展開については、また別の機会に詳しくお願いしますよ。その言葉凄く気になってるんですよ。焼きについてはどうですか?」

良「分かりました。焼きはねー、一番重要視してますからねー。焼いてないと焼物じゃないですからね。」

僕「うん。焼くって重要ですね。」

良「土がキャンパスで、炎が絵の具っていう感じです。だから下地作り、色付け、仕上げと段階を分け焼き分けます。」

僕「複数回の焼きを経て、様々な段階を踏むんですね。」

良「そう。まず下地作りで胡麻の箇所や赤い抜け等を、しっかり記憶させとかなければいけないんです。何も考えてないと、ただ焼いただけになりますからね。構成を練っておかないとダメ。」

僕「構成ですか。森本さんの特徴ですね。」

良「下地焼きが出来たら煙をかまし…。うーん、こっから企業秘密ですね(笑)」

僕「そうですかー。残念ですね(笑)気になるなー。教えてくださいよ。」

良「ちょっと無理ですよ(笑)結果、溶けたチョコレートの肌に強い黄色い胡麻と赤い抜け。油絵のようなマチエールを目指してます。」

僕「凄い話ですねー。そういえば森本さんはいつから焼物に興味があったんですか。」

良「家が職人だったから、小遣い稼ぎで中学くらいから窯焚きのバイトをしてましたからね。」

僕「焼物屋の子供の必ずする小遣い稼ぎですね(笑)」

良「そうそう(笑)だから興味があって始めた訳じゃないんです。高校卒業して何も考えず、陶芸センターに行きましたよ(笑)」

僕「僕も何か行かされそうでしたよ(笑)結局行かなかったけど、どうなんですか?」

良「試験がありましたよ。で、そん時はホント興味無かったから県名に焼物を当てはめる設問で、岡山県以外は全部『有田焼』って書いてましたよ(笑)」

僕「無茶ですね(笑)有田焼は知ってたんだ。」

良「何か知ってた(笑)入所してもずっとその調子で遊んでましたよ。僕はそん時18才だったんですけど、中は色んな人が居て定時制の高校みたいなノリでしたね。」

僕「そうなんですか。一年で卒業ですかね?」

良「そうそう。で、まぁ卒業してフリーの窯焚きで食ってましたね。窯焚きって三交代なんですよ、登り窯って。最初は昼間で上手い人が夜中に入るもんなんですけど、いきなり夜中に入れられたんですよ(笑)『お前上手いなー』って感じで。で、それが人生の中で初めて褒められたっていうか、あ、俺上手いんだって思った(笑)」

僕「それでやる気が出て来たと(笑)」

良「そうそう。図に乗っちゃいました(笑)で、色々窯焚きに参加して。」

僕「さすらいの窯焚き野郎ですね(笑)」

良「いやぁ窯を焚いてるとタバコも美味いし、飯も美味い。最後の炭入れの時は人がいっぱい来て修学旅行みたいに盛り上がっちゃう(笑)枕投げ的なノリですよ(笑)」

僕「キャンプファイヤーとかのワイワイ感ですね。」

良「うん。その後の飲み食いとかもホント楽しい。でも現状に段々不満を持つようになってきたんですよ。そんな時に神戸のデパートで個展をされてた安倍先生に出会ったんですよ。で、『岡山から来たのか。じゃあ一緒に帰ろう』ってなって、アトリエにお邪魔するようになった。」

僕「そうですか。遂に安倍先生と出会ったんですね。」

今日はここまでです。
ちなみに今回の写真は森本良信さんのアトリエの住人です。
作家必須アイテムのオーディオに、美術誌・写真集と錆びたギター。
それにいつもお世話になっている灰皿と湯呑です。
こういった工房の隅々も作家によって様々です。
もしかすると作品に多大な影響を及ぼしている、
「何か」の存在をそこに感知出来るかも知れません。
生きる事そのままが作品に表れる場合が多々ありますので。

[ 陶房の月 森本良信と語らう 第二弾 ]陶芸家に会う2006/10/01 00:08