皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
備前でも10月中旬となりますと朝晩は肌寒くなってまいりました。
さて、10月20日(土)21日(日)は備前焼まつりですので、
ぜひ皆様備前までお越しの際には当店にお立ち寄りくださいませ。
また、本日は金重陶陽先生の希少な木菟香合が入荷致しましたのでご紹介させて頂きます。
昭和初期頃(作品集によりますと昭和10年)に制作された作品で、
細工物制作から轆轤物制作へと転換する時期の「土’」の陶印が使用されています。
細工物ではありますがデフォルメされた可愛らしいデザインとなっています。
木菟のつぶらな瞳や、どこか哀愁の漂う佇まい、ずんぐりとした体型、
そして耳や羽の何とも言えないデザインは非常に可愛らしいですね。
備前細工物の中でも最近人気の可愛らしいタイプのものに通ずるデザインとなっています。
昭和初期にこのセンスはさすが天才陶工と呼ばれた陶陽先生らしいです。
いつまでも掌の上で眺めたくなる可愛らしいデザインとなっています。
個人的にこの位置から見るのが一番好きです。何とも言えない哀愁の漂う背中です。
丁度桟切も鳥の羽毛の色付けのように乗っているのが素晴らしいです。
しかし作品の細かな部分に目をやるとこの作品のイメージは大きく覆ります。
現代備前の細工物制作の旗手とも言える島村 光先生が昔、
「陶陽さんの細工は見えないところほど凄いよ」と仰られていました。
実際この細工物でもその言葉通りに見えない部分では鬼気迫るような仕事ぶりとなっており、
猛禽類の象徴とも言える鋭い鉤爪を柔らかな備前土で見事に再現しています。
本作に触れれば、獲物の皮を裂き肉に食い込む鉤爪の鋭い質感を味わうことが出来ます。
また、何と言っても内側の仕上げが秀逸で、非常に細かい箆で中の土を丁寧に掻き出しています。
内側に土の削りカスや土の不自然なヨレなども一切無く、非常に綺麗に仕上げられています。
昭和初期という備前焼苦難の時代であってもこれだけの仕事ぶりをされているのには感動します。
寧ろこの内側の細かい仕事ぶりこそが真の細工ではないでしょうか。
自分を取り巻く環境や時代そのものがどんなに苦しかろうとも自分の信念を曲げること無く、
自分の仕事ややるべき事を徹底出来る陶陽先生の鋼の意志には尊敬の念を抱かずにはいられません。
土を掻き出した内側だけでなく、接合部分の仕上げもとても滑らかで美しいです。
(金重陶陽/備前木菟香合 道明識箱)
size:幅5.2cm×奥行6.7cm×高さ6.3cm price: 売約済
作品の詳細な画像などは下記までお問い合わせ下さい。
Tel 0869-67-2210 Fax 0869-67-2220
川口陶楽苑へのメール(クリックするとメール送信画面になります)