皆さんこんにちは、いかがお過ごしでしょうか。
朝晩は秋らしい涼しさを感じる日が多くなってきましたね。
あれだけ騒がしかった蝉の声がいつしか消え、最近はキリギリスがよく鳴いています。
さて、本日は愛媛県に在住のお茶碗の一大コレクターのご夫妻のお招きに預かり、
金重有邦先生と愛媛県までご一緒させて頂きましたのでその記事となります。
宇和島の鯛など愛媛県の海の幸を堪能できる素晴らしいお料理と、
有名な道後温泉が楽しめる旅館「栴檀」様にお招き頂きました。
お食事の後はそのまま金重有邦先生のお茶碗でお茶を頂く事となりました。
先生自らお茶を点てて下さり、実物を手にお茶碗づくりについて大変貴重なお話を伺いました。
お茶碗の頂点に位置する楽茶碗や井戸茶碗について、これまでの様々な茶陶の研究について、
さらに亡くなる直前の最晩年期の金重素山先生の貴重なお話まで知ることが出来て、
備前焼に携わる者として大変有意義な時間となりました。
特に印象的だったのが有邦先生の初個展のときの素山先生のお話でした。
有邦先生が初めての個展を終えて、視察に来た素山先生を乗せた帰り道の車内でのお話です。
お話の中で初個展について素山先生より尋ねられた有邦先生は、
「ありがたいことに出品した作品は全て売れたそうです」と答えると、
素山先生は突然「なんたることか!」と大変お怒りになられたそうです。
有邦先生はびっくりして理由を聞くと、「個展というものは完売を目指すものではない」と言われたそうです。
全ての作品を売れるようなもので揃えるのではなく、二割の作品は残るようにしておきなさいというのです。
その理由というのがその残すべき二割のものは世間に問うような作品でなければならず、
その二割を持ち帰ってさらなる研鑽の糧とすべし、との理由だそうです。
苦しい時代であっても常に挑戦を続けてきた素山先生らしいお言葉ですね。
その言葉が現在の有邦先生の飽くなき挑戦に繋がっていると思うと大変感慨深いです。