皆さんこんにちは、如何お過ごしでしょうか。
先日金重有邦先生の窯変酒呑を販売させて頂きましたが、
その際に「伊部牛神下窯の最後の窯出し」との記述を致しました。
この一文に金重一門のファンの方からのお問い合わせが大変多く、
今回の記事を書かせて頂く事となりました。
有邦先生は今回の窯変作品を手掛けられる前から仰られていた、
「所謂金重備前ではなく、ここらで一人の陶工としての仕事を手掛けたい」
という言葉を実現するべく、現在新たな窯を築窯されています。
有邦先生は窯を二基所有されており、素山先生が築窯した牛神下窯と、
その隣に15年ほど前に築窯した山土作品を焼く為の小窯があります。
この二基が並んでいれば小窯を崩す方が良いのでは、と思われる方も多いと思います。
実際に有邦先生ご自身もかなり悩んだ末に牛神下の方を崩すことに決めたそうです。
息子さんお二人からも「お父さんの好きにしたら良い」という後押しがあったそうです。
牛神下窯を崩すと窯職人も少なくなった現在では二度と復元する事は出来ません。
崩した窯から取り出した特注の耐火煉瓦(巨大な立方体で円山窯にも使用されている)を見ると、
素人の私から見ても不可逆のものであるという事は一目瞭然でした。
思えば金重陶陽先生の遺した窯焚きに関する言葉の中に、
窯を母体、作品を胎児として見よ、窯焚きの火で胎児を育てよという言葉があります。
今回は少し意味合いは違うかもしれませんが、牛神下窯を母体として見て、
「有邦」という一人の陶工の誕生、完全な独立を意味しているように感じました。
牛神下窯を崩すという決断には未練を断ち切り離別するという意味もあったのかも知れません。
以上のような経緯があり、先日の窯変作品に「最後の窯出し」の旨を記載致しました。
金重有邦先生としてのある意味では最晩年作とも言える窯変作品となっております。
この窯変作品を手掛けられる前にも山土作品を始めとする独創的な作品発表で、
15年程考えを巡らせつつ田土や窯変作品と再び向き合うまでの期間を設けられていました。
人生の半分以上を陶芸に費やし、有り余る才能を持ちつつも熟慮に熟慮を重ねて、
やっと一つの完成へと漕ぎ着けた、言わば金重有邦の集大成のような作品となっています。
今はこの金重有邦先生の素晴らしい窯変をじっくり愛でながら、
「有邦」という一人の陶工の歩む新たな道をお待ち頂ければと思います。
緋色、カセ胡麻、灰被り窯変のバランスが完璧なカセ窯変の徳利です。
(金重有邦/伊部徳利 共箱)
size:径10.8cm×径10.8cm×高さ12.9cm price: 売約済
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