人間国宝無形文化財等、備前焼の有名作家による個性溢れる作品を一堂に展示しています。



 

 

木畑考生 新作展   2月15日20時~28日17時

 

 

この度、木畑考生先生の窯出されたばかりの新作を特集させて頂くこととなりました。
木畑先生は2002年に伊勢崎 淳先生に師事し、
9年の長きに亘って修行され2012年にデビューされました。

木畑先生というと一つ思い出すエピソードがあります。
ある日、淳先生の工房にさり気なく飾っていた羊の置物に目が止まり、
どなたが制作されたのか気になって他のスタッフの方に尋ねると木畑先生のお名前が返ってきました。
その時に将来独立されたら作品をご紹介できればと強く印象に残りました。

2012年に築窯独立されましたが自らを土マニアと称されるだけあって、
採取した粘土11種類テストピースの焼成と標本化に一年間取り組まれ、
ついには3000パターンを越える発色を考案されたそうです。
そして選りすぐりの色を見て欲しいとの思いで今回の新作展に臨まれました。

陶芸の事をしばしば料理に例えられる木畑先生は、土の中に隠された美しい色合い、
喩えるならば個々の土が持つ「旨味成分」をいかに引き出すかを今回のテーマにされています。
今回はデザイン性を抑えて旨味だけを窯焚きで取り出す事を目指したと語られていました。
デザイン性を抑えると言ってもただ機能性だけを残した無個性なデザインではなく、
土本来の色を受け入れるための「空」の造形を見事にデザインされています。
そうして表現された色に私は何か強烈な感情の揺さぶりを感じていました。

我々は文明を進化させることで、危険を取り除きより豊かな暮らしを手に入れて参りました。
そういった豊かな暮らしの中で色によって受ける刺激も変化していきました。
大空の青や無限の大海原に感動し、それらを時に神格化し、色や音に生命を見出していました。
漆黒の闇の中に死を感じ、己が体を駆け巡る熱き血潮の赤に情熱を感じ、白き獣を神の使いとしました。
それらは時に洞窟の壁に記憶され、キャンバスや陶器の上に様々に形態を変え記憶されていきました。
時は流れて現代では精密なデータとして記憶され、デジタルコンテンツとして提供されています。
美しい青空も無限に広がる大森林も漆黒の宇宙も電気信号によって表現できます。

それらの電気信号による色の刺激に対して免疫の出来つつあった私は、
木畑先生の作品に見事なパンチをもらってしまいました。
強烈なパンチは私のくたびれた受信機関を叩き起こし、
土によるカラーショーで眠っていた本能を揺さぶり起こしてくれました。
生と死を身近に感じることがなくなった私に、朽ち果て風化したかのような赤褐色の肌が、
魂が抜け出る途中のようにグラデーションした黒が、
死に対する原始的な恐怖として本能を訴えかけてくるかのようです。
そして朽ち果て色褪せ壊れていくからこそ、そこに宿っている生をより強く感じます。
この作品は喩えるならば土を使ったエロスとタナトスの絵のようであり、
「空」の造形に額装された色によって欲動を呼び起こされるものだと感じます。

 

 

「木畑考生 新作展」の梱包について

       

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