茶碗のイロハ―金重有邦先生と語らう―

皆さんこんにちは、いかがお過ごしでしょうか。

この間年が明けたと思ったのですがあっという間に師走となりましたね。

さて先日、金重有邦先生の工房へお邪魔する機会があり、

その際に茶碗に関する貴重なお話を色々聞けたので覚えている限りでご紹介したいと思います。

まずはお茶の緑の美しさについて。

前々からお茶を頂く機会がある度に思っていたのですが、お茶の緑って本当に美しいですよね。

とても爽やかな緑で心が洗われるようなとてもスッキリした気分になります。

もちろんカフェインなどの効果もあるのでしょうが、お茶の美しい色合いには本当に癒やされます。

このお茶の緑について金重有邦先生にお話を伺ってみました。

「それはね、本能に根ざした感覚だと思うのよ。」

「お茶を飲み終わった後の茶碗の見込みは、お茶が染み込んで独特の色合いになる。」

「この茶碗で言えば真っ黒な無機的なものに、有機的なものである苔が生すような景色となるでしょう。」

「これがやっぱり人間の本能的に安心感を与えるんじゃないかと思うよ。」

このお話を聞いてなるほど、と思いました。

備前の茶碗や信楽の茶碗でお茶を頂くと、岩肌を苔が覆うような景色となり、

本作のような黒の茶碗であれば宇宙を覗き込むような景色となります。

緑色が持つ安らぎや癒やしの効果がより強調されているのではないかと思います。

次はお茶碗の造形と味に与える影響について。

「お茶碗でも大きい茶碗や小さい茶碗があるけど、これはみんな違う役割がある。」

「薄茶(一人用)濃茶(複数人で回し飲む)もそうだけど、何よりも味に変化を与える。」

「見込みから口に到達するまでのストロークが長いほどお茶は美味しく感じられるよ。」

「つまり大きい茶碗程、お茶が美味しく飲める。」

これも初めて聞いてとても驚きました。

金重有邦先生は制作する際にお茶碗に限らず酒呑でもそうですが、

陶器が内容物に与える味の変化を常に気にされて作陶されています。

お茶碗は外見よりも何よりもお茶を如何に美味しく口に届けるか、が重要なんだそうです。

私はお茶に関しては勉強不足の素人ではありますが、

いつも金重有邦先生のお茶碗でお茶を頂くと気持ちよく口に流れ込んできます。

もう一口、もう一口であっという間にお茶が無くなってしまいます。

ただ、大きければ大きいほど持つ方はストレスを感じてしまうそうで、

大きめのお茶碗を作る際には如何に持ち手に収まり良く作れるかにいつも苦心されているそうです。




最後は今回撮影に使わせて頂いた「玄碗」について。

黒作品ではありがちなのっぺりとした黒い釉薬が、重くお茶碗にもたれ掛かるようなイメージが見られず、

非常に練り込んだような色合いで、色合いに奥行きが感じられることをお伝えしました。

すると「これは様々な黒の釉薬を場所ごとに使い分けて筆で塗っているのよ。」とお教え頂きました。

写真で見て頂いても分かる通り、柚子肌になった部分や、逆につるりとした面があったり、

釉薬が滑落し胎土が見える部分など、非常に変化に富んだバラエティ豊かな釉調になっています。

また、本作は楽焼の技法を備前の窯で取り入れたものとなっており、

備前の窯で焼成中に発生した燠の中に埋めて焼きながら、更にそれを引き出したそうです。

その際の窯の中の温度たるや1000度をゆうに超すそうで、

金重有邦先生は「大変だからしばらく黒はもう良いかな」と笑いながら仰られていました。

さて、今回の企画は如何だったでしょうか。

金重有邦先生は行住坐臥常に陶の事を考えておられるような方で、

お会いする度に新鮮な驚きがあり、それが何よりも楽しいと感じてしまいます。

これからも金重有邦先生の挑戦を追いかけていきたいと思いますので是非ご期待下さいませ。

 

(金重有邦/玄碗 共箱制作中) 

size:径12.9cm×径12.5cm×高さ9.5cm price: 売約済

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[ 茶碗のイロハ―金重有邦先生と語らう― ]陶芸家に会う2019/12/10 14:39