森 一洋先生と語らう。其の壱

今回は森 一洋先生の個展に併せて、インタビューを掲載したいと思います。
このインタビューの中から、先生の人間そのものに触れていただければと思っております。

僕「先生、宜しくお願い致します。」

一洋先生(以下 一)「どうも。」

僕「じゃあまず幼少の頃の思い出なんてのを教えてもらえますか?陶芸家になったきっかけとか。」

一「うーん、きっかけなんてものはないねぇ。とりあえず産まれた時から焼物が周りにあったから。」

僕「なるほど。」

一「お祖父さんとかが仕事場で、ロクロを挽いてるのを見てて…。」

僕「じゃあそこで遊んでたんですか。」

一「うーん…。遊んだり、ロクロを触ったり。それがきっかけなのかなぁ。」

僕「そうですか。じゃあ『陶芸家しよう!』って感じじゃなく、自然な感じで。」

一「そうですね。山を歩いてて花が咲いてるって感じで(笑)自然に。」

僕「そんな感じなんですか(笑)じゃあ実際に陶芸家になって、作り始めてからってコンセプトなんかは決まってたんですか?」

一「いや、そんなのは別にないですよ。最初はもう、徳利なら徳利が作りたいって感じで。」

僕「すですか。あの先生はガラス工芸研究所へ行かれてますよね。これは一体?」

一「それはですねー、大学の時にこの(籠花入を見ながら)透かしなら透かしの空いた面がありますよね。ここをガラスにしたかった。」

僕「えっ?!そうなんですか!じゃあ備前焼があって、その上にガラスがあったんですか。」

一「まぁ大学が陶芸科なんですけど、その中で作ってると『これにガラスを組み合わせたら面白いんじゃないか。』と。だから最初は単なる思い付きだったと(笑)」

僕「なるほど(笑)」

一「で、(ガラス工芸研究所へ)入った訳ですが、やってみたら意外と難しかったと。」

僕「じゃあ現在の作陶にも影響が出てますか?先生の徳利って軽いですよね。」

一「うーん、ガラスの影響じゃないんですけど、僕の基本的な考えとして使うものは機能的じゃないとっていうのがあるんです。」

僕「機能的ですか。」

一「例えば徳利でも、中身が入ってないのに入ってるくらい重たかったら、そんなの毎日使いたくないでしょ?」

僕「確かに先生の作品は軽いですよね。機能性重視ですか。」

一「そうですね。機能性を考えた上で、作家としての個性を乗せていくって感じですかね。」

と、いうことで本日はここまでです。
機能性。
お客さんは無意識の内に気にされてますけど、ここまで追求する作家さんて中々いないと思います。
今の備前焼の造りに重きを置く作家って、「斬新」を追求されてる方がほとんどですからね。
でも、機能性を究めていくと、恐らく日本刀のような美しさとなるんじゃないでしょうか。
シンプルに、シャープに、モダンに。
一洋先生のOnline個展の図録の冒頭に、「美しく鍛え上げられた作品ばかりでございます。」
と書きましたが、実はこの日本刀って辺りからインスパイアされてます。
日本刀って銃の弾の無い頃から開発されたのに、拳銃の弾を切り裂きますよね。
これって究極の機能性なんじゃないでしょうか。
機能性を極めたら、未来の見たことも聞いたことも無いニーズにすら対応する。
今回の個展では是非この辺りにも注目してみて下さい。
あと、今回の写真ですが寒風大窯の工房巡りです。
言葉に重きを置きたかったんで、ちょっと小さくしました。
それでは、また。
                                      to be continued…

[ 森 一洋先生と語らう。其の壱 ]陶芸家に会う2006/11/05 00:42