人間国宝無形文化財等、備前焼の有名作家による個性溢れる作品を一堂に展示しています。



 

 

真志郎、三平池を語る

 

 

 

 

:今日のこの場所はすごく静かで良いですね。

:そうですね。しかもここは良い土も採れるので工房には最適ですね。
  以前はここからさらに少し下ったところの集落に住んでいたんですが、 勤務していた陶芸会館に通うのにずっとここ

  を通ってて、この場所良いなと思ってたんですよ。
  それでスコップで土を掘ってみたら使えそうだったので、思い切ってここに工房を構えました。

:まず土を見るところが陶芸家らしくていいですね。

:そうですね、やっぱり土は大事ですから。
  最初は電気も来てなくて、電気なしで窯焚きしたので凄い大変でしたね。
  とにかくランタン一つでなんとか焚きました。
  電気が来てなくてもそれでもやっぱりこの場所が良かった。
  勿論その他にも水道とかもないんですけど。

:何が良かったですか?

:うーん、やっぱり自然ですね。
  お気に入りの場所は、道路を隔てた向こうにある池なんですけど、あそこ

  の畔から池を眺めるのが好きですね。
  三平池って言うんですけど、あそこへ椅子を持って行って何も考えずにボ

  ーっと眺めたりとか。

:いい名前ですね。今回の特集に使いたいですね。

:そうですか。自分はあんまりこういうインタビューとか受けてないので新

  鮮ですね。

 

:なるほど、そうですか。
  この場所にきて初めて気付いたのが、相賀さんの作品は土との親和性が凄く高いということに気づきました。
  照明やインテリアがきれいな場所で美しく展示するのも良いんですが、
  そこの山や森に埋めておいてお客さんに掘ってもらってもいいかなとすら思います。
  安倍安人先生もここに来られるんですか?


:ええ、窯を炊いてる時などにたまに見に来られますよ。

:その時はどのような感じですか?

:安倍先生は凄く理論的な方ですよね。
  僕はもう少し直感的な方なので、むしろ「好きにやってみろ」って感じで言

  われます。

:そうですね。
  割ったものがあちこちにあってびっくりしたのですが、本当にすごい量です

  ね。

:そうですね、本当にあちこちに捨ててありますから(笑)
  作って素焼きにしたときに割る場合もあれば、一回焼いてみて割る場合もありますね。
  そこからまた何回か焼いてみて割ったりもします。
  本当に捨てる場所も無いくらいです。

:どういった想いを持って捨ててますか?


:それはもう「土に還って欲しい」ですね。
  まぁ何年掛かるか分からないですけど。

:そうですか。結構ぱっと見て割るか決めているんですか?

:そうですね、結構すぐ決めます。
  だからたまに捨ててあるものをふと見て「何でこれ面白いのに捨てたんだ

  ろう」と思ったりもしますね(笑)
  だから選考基準とかっていうのは凄く曖昧なものですよね。

:直感的なもので判断しているんですね。

:そうですね、自分自身の変化っていうのも勿論大きいでしょうし。
  そういう自分の変化っていうのは気付けないものですし。

:微妙な積み重ねですね。
  積み重ねといえば今回の作品は大体どのくらいの期間で作られているんですか?

:そうですね、今回の作品に関しては2月くらいから手掛けています。
  そこから2~3ヶ月して出来上がってくるというような感じですね。

:なるほど、約2ヶ月くらいですか。
  今回の作品は、ここの土も使ってますか?

:はい、ここの土を掘ったりしてそこから色々とブレンドしてますね。
  場所としてはここよりもっと奥の山裾や、すぐそこの道路に面した部分等

  色々な場所から掘ってきています。

:一回でどのくらい掘るんですか?

:そんな大量には掘らないですね。
  ここの場所以外の土も混ぜますんで、大体バケツ二杯くらいです。

:土は結構選びますか?

:そうですね、やっぱり選んで使います。
  土の層があるんでそれを見てますね。
  ヒヨセっぽい層だとか、ざっくりした層であるとか、さらにその二つが混ざり合ったような層があります。
  ここで採れるような土というのは、大体ベージュのような色合いです。

:ではここの土に決めようと思ったのは何故ですか?

:色々とテストした中でこの土が一番思っていたものに近かったからですね。
  そんなに大量にはテストしていないのですが。

 

:なるほど、どこが良かったですか?

:やっぱり鉄分がある程度あるので、思っている焼けになりやすいからで

  すね。
  あとは山土の特徴でもある何回も焼くための耐火度の高さですかね。
  多分ここら辺りの土は昔の人も使っていたんじゃないかな、と思います。

:なるほど、今日はありがとうございました。
  最後に一言お願いします。

:作品の持つ強さや存在感の中にスッと心に入ってくるさりげない良さが出せたら、と思っています。
  それを求める中で、また自身がどのように変化していくかが楽しみでもあります。
  まだまだ未熟ではありますが、どうぞよろしくお願い致します。

 

 


 

 

   

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