真志郎、今を語る
川:ここで過去を振り返ってみた訳ですが、現在の心境をお聞かせください。
相:えーっと、やっぱりただ古い物だけを見るんじゃなく、 そこからなにか新しいものが見つかればな、と考えています。
最初はやっぱり古い物だけって感じでしたけど、考え方が変わってきましたね。
川:なるほど、囚われないようにですね。
相:そうですね、そこから何か発展させていきたいと思うようになりました。
自分なりの物を出していきたいなぁと思いますね。
川:そうですか。改めてお聞きしますが、相賀さんにとっての古い物って一体なんですか?
相:師匠、としか言いようがないものですね。 ライバルにはまだまだなれません。
川:なるほど。では今現在のこだわりなどは?
相:あんまり意識しすぎないことですね。「こうしよう、ああしよう」とかあんまり意識せずに、ロクロが回るまま……。
川:なるほど、無作為ですか。
相:はい、自然体ですね。
川:なるほど。でも自然体や無意識って作陶とは正反対の事じゃないですか?
かなり難しい事ですよね。相:はい、やっぱり難しいですね。
作るって事は意識するって事ですから。それをどう自分で消していくかって感じですね。
でも実際作ってる頭の中では「ああしよう、こうしよう」というのが出てきますね。
やっぱり出てくるんですけど、それを無くす努力をこれからもしていきたいです。
川:やはり意識は出てきますよね。
相:ええ、でも作ってる時に知らない間に数時間経っていることがあるんですよ。
そういう時ってのは無意識で作れたのかなぁ、と思っています。
やっぱり意識して作っていると時間が経つのは遅いんですよ。川:没頭しているんですね。
相:だからこういう言い方は変なんですけど、作ってて苦しさすら感じる時もありますね。
悩む時もあれば何故こういう風に出来ないんだろうと苛立つこともあります。
川:全神経を傾けるからこその苦痛ですね。相:ええ。確実にこういう物って言うのは無いのですが、来上がったものを見て「何か違うな」とも思いますね。
そうしてるともう何が何だか自分でも分からなくなってきます。
そういうところはきっと月日を重ねていかないと埋まらない部分もあるのでしょうが。
もっともっと作り込まなきゃいけないですね。
川:そうですね。作り込まなきゃという事は、今現在のペースでどのくらいの数を残してたりするんですか?
相:かなり割ってますね。茶碗10個作って残すのは1個か2個ですね。
その中で焼いてからまた選別して割る場合ももちろんありますし。
川:相当篩いにかけられてますね。
相:不思議な事に作った時にはいいな、と思っても焼けるとこうじゃないなと思ったりもします。
川:それは色んな作家さんが口を揃えて言いますね。自身の指標に向けて妥
協しないんですね。
相:さっき言われた目標って言うのでも、結局は自分で満足するものが作りたいだけなんです。
今は本当にただそれだけです。