桃山期の古備前に学び、現代における備前酒器の源流とも言える数々の作品を生み出したのが金重陶陽先生です。
その金重陶陽先生の徳利の中でも稀少な瓢型の徳利で、擂座耳付けと腰部には力強い箆削りが施されており、
観音土と呼ばれる良質の田土(ヒヨセ)の、土質の細かさを表現するにはまさに理想的と言える造形になっています。
格調高く堂々とした見た目に反して大変軽くなっており、元々の薄挽き轆轤にさらに軽快な箆削りが合わさっています。
焼き上がりも大変素晴らしく、墨色の窯変が総身に出た総灰被りとなり、酒に濡れれば極上の艶を見せてくれます。
細工物の名人と呼ばれた父のもとに生まれ、伊部の若き天才と言われた一人の男が、
幼少期より心血を注いで磨き上げた細工(デコ)の腕を、惜しむこと無く捨て去って轆轤に打ち込み、
資料も少ない中で桃山茶陶の名品を所持する数寄者を訪ね歩き、時に海外や他の窯業地の名人達と交流し、
苦労に苦労を重ねて追い求めた果てしない夢の、さらにその最果てに位置する昭和41年作の徳利です。
同封された陶歴書も大変珍しく、正式な陶歴書としては最新にあたる「昭和41年 紫綬褒章受章」が記載されています。
また、本作は昭和52年に学習研究社より発刊されている「備前 金重陶陽」図録の203図に掲載されていました。
一人の陶工の遙かなる旅路の果ての、未来へと繋ぐ想いが作品に宿っているように感じます。
口縁3.2cm×胴径8.5cm×胴径8.1cm×高さ13.4cm SOLD OUT